定時退勤出来ない学校に行きたくない

Walking Businesswoman 働き方改革
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定時退勤は働き方改革の要

日本の国際競争力の凋落

 国際通貨基金(IMF)によると、先進国とされている40カ国・地域の中で、日本は1人当たりの国内総生産(GDP)が、2022年4月統計4万1809ドルで第29位となっている。世界第1位のルクセンブルク(12万505ドル)に比べると34%、アメリカ(6万5117ドル)の64%、アジア第1位シンガポール(11万2699ドル)の37%しかない。ドイツ(5万4192ドル)、イギリス(4万7365ドル)、そして韓国(4万5438ドル)に比べても低い。この差は、円高を言い訳に出来ない数字だ。
さらに、2027年の予想では、日本は4万4876ドルと約3000ドル増加の予想だが、順位はイタリアにも抜かれ第34位と衰退の一途を辿っている。日本より下位はスペイン、スロバキア、ポルトガル、ラトビア、プエルトリコ、ギリシャの6カ国しかない。ルクセンブルクは12万7382ドル、アメリカ6万9306ドル、アジア第1位シンガポールは12万7236ドルで世界一位に迫る勢いと予想されている。
 

日本は少子高齢・人口減少社会 

 こうした日本の一人当たりの国内総生産(GDP)が他国に比べて伸び悩んでいる一因としてあげられるのが、日本が世界に例を見ないスピードで「少子高齢・人口減少社会」に突入しているからだ。その要因はいろいろあるのでここでは省く。だが現実として、1億2500万人ほどの日本の人口は、あと50年で人口は半分の6000万人ほどに減少する。しかもその大半は生産年齢人口ではない老人だ。

もっとも活発に消費行動をするのは何歳か

 人間が一生のうちで、もっとも消費行動が大きくなるのは30代といわれている。ある程度給料が上がってきた時点で、婚姻のための消費活動を積極的に行うからだ。マーケティングでも、女性目線でプロデュースすべきなのはかなり前から言われている。男性が来店してもお一人様が多いが、女性が来店するときには複数や男性同伴の場合が多い。女性を呼び込めば、倍以上の来店数が望めるのだ。その他、デート代、婚姻費用、新居、家財、出産、育児、など、個人消費の削りにくい部分の大半を占める。
 一方、老人はそもそも精力が衰えており、活動量も減少する。これからの日本は、老人が多くなり、生産性も、消費も、世界の中で見れば期待できない。世界がかつて見たこともないスピードで、こうした世界に突入していくのだ。

学校の常識は世間の非常識

こうした中、現在の学校は未だにバブル期のような消費を是とする教育を行っている。少しでも隙間があれば何かを詰め込む。効率よく大量生産さえしておけば、誰かがいつか買うという発想だ。原始的な硬直化している役所は、詰め込んだ実績で評価され、他の課と連携・調整を取ることもなく学校に通知を出してくる。もっとも、その通知自身も日本語として体をなしていない物が急増してきた。朝令暮改ならぬ朝礼朝改も多い。また、文部科学省が出す施策は、大抵地方の教育委員会が(余計な)解釈を加えて学校に卸すが、誤訳が多く、謎の通知になっていることがほとんどだ。今回の改定で大きく変わった学校の本丸である学習指導要領や評価についても、各自治体で勝手に解釈を加えて指導主事がわかった顔で説明しているが、文部科学省の意図していることがひどく曲解されており、惨憺たる現状がある。指導主事を将来の管理職候補として育成したい気持ちはわかるが、教育心理学に基づいて作られた学習指導要領が、無残に切り刻まれて学校に下ろされると、本当にこの国の教育は崩壊していると思わざるを得ない。

未来の日本で大切なもの

未来の日本は、老人が多数の国となり、世界の中で相対的に貧困になっていくことは避けられない事実だ。つまり、バブル期のような大消費生活を前提にした暮らし方は成り立たないのである。これからはQOLの向上を目指すのことが大切になるだろう。今までの詰め込めるだけ詰め込んできた学校教育は、子どもの将来のためにはあまり役に立たない。むしろ逆行していると言わざるを得ない。子どもの教育はすべて学校で、大人は生産に、というのは、「人としての生活の質」をあげていくべきこれからの流れにマッチしない。予想もしない変化が待っている世の中(VUCA)であり、子どもたちが100年後の人生を充実したものにするには、「学び続ける姿勢」や「いたわり合う気持ち」「自己効力感の向上」など、学校で育てることは難しいものがこれから必要になってくるのだ。

生涯未婚率と学校の働き方改革

 現在の学校は、朝5時台から21時台まで、教員がいる。時間外勤務が100時間を超える教員も多い。それを可能にしているのが、「生涯未婚教職員」「子どものいない教職員」「家庭を顧みない教職員」である。家庭があり、子どもがいる教職員では、こうした勤務は難しい。つまり、人間的な勤務時間を度外視した学校運営を行うと言うことは、これらワーカーホリックに強大な発言力を与え続けるのだ。ワーカホリックたちが学校の文化をつくると、子どもの失敗にも寛容な「親」としての顔を持つ教職員の発言力は下がる。子どもの躓きを許さない、寛容性に欠ける学校になっていくことに他ならない。

教師が働き方のロールモデル

教師は、社会的役割で言えば子どもにとって家庭以外で接する最初の「大人」であり「社会人」である。親と同じ寛容性でなくとも構わないし、多様性のある方が子どもたちの学びにもなるだろう。また、いきなり社会に出るよりも緩衝的な役割を果たすことも期待できるだろう。大切なのは、バランスである。残念ながら、働き方改革の進んでいない学校は、子どもの気持ちを考える柔軟性に欠ける傾向が強い。定時退勤を促して、「親」の感覚を持つ教職員の発言力を担保することは、学校内のベクトルを正常化することに大いに役立つのである。「働き方改革」を単なるキャッチコピーにするのではなく、学校正常化に向けた内容を伴う大きな流れにしていきたい。そう考えると、国家100年の計として、まずは定時退勤を定着させることが必要だろう。

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