“がんばれ”の季節を、やさしく包み直す――10月中盤の子どもの心理

Featured image 1532 8fd4796af5b6bccefeacd7acf68dc11b.png SEL
この記事は約3分で読めます。

教育 × 心理 | 学校の現場をひらくコラム

“がんばれ”の季節を、やさしく包み直す
— 2学期中盤の子どもの心理

公開日: 2025-10-18
運動会や文化祭のにぎわいがひとまず収まり、教室には「次」が見え始めます。成績、進路、人間関係――見えないプレッシャーが少しずつ積もる季節。そんなとき、よかれと思って投げかけた「がんばれ」が、かえって子どもを追い詰めることがあるとしたら――どう声をかけ、場を整えればよいでしょうか。

心理学的な視点で見る、この時期の子ども

ポイントは 「内的動機づけ」と「心理的安全性」。外からの期待や評価が強まると、それを内面化できなかった子は不安や無力感を強くします。教員・保護者の関わりが、内的なやる気のゆるやかな育ちを左右します。

よくある誤解

  • 「励まし=やる気向上」ではない。単純な叱咤は外発的動機づけを促すだけで終わることが多い。
  • 「甘やかす」と「支える」は異なる。支援は自主性を奪わないやり方で行う。
実践的な概念メモ:

内的動機づけ(internalization)/心理的安全性(psychological safety)/自己効力感(self-efficacy)

保護者にできること — 言葉と場のデザイン

「どうして疲れたと思う?」と問いかける時間を意図的につくりましょう。問題の解決だけを求めるのではなく、感情を受け止め、子どもが自分で答えを持てるように手を添えます。

具体的な声かけ例

  • NG: 「もっとがんばりなさい」 → OK: 「最近、何が一番大変だと感じてる?」
  • NG: 「みんなやってるよ」 → OK: 「あなたのやり方でうまくいったことは何?」

教員向け — クラスの空気を整える小さな習慣

クラスで「失敗学びカード」や「短い振り返りタイム」を導入してみてください。形を小さく、頻度を高くすることで、子どもたちの不安を外に出す習慣が育ちます。

短時間でできる活動例(5分〜10分)

  • 「今日の小さな挑戦」:一人1行で書く。共有は任意。
  • 「気分メーター」:毎朝・午後に色を選んで掲示(匿名でも可)。

子ども本人へ — 自分を扱う小さなスキル

「失敗は成績だけを示すものではない。次の一歩のヒントだよ。」

呼吸や短い身体リセット(席で伸びをする、窓を3回見て深呼吸)は即効性のあるセルフケアです。感情のラベリング(名前をつける)も有効です。

よくあるケースと対応の例

ケースA:成績が下がって落ち込んでいる

対応:評価ではなく、どの部分が苦手かに焦点を当て、次の小さな目標(短・具体)を一緒に設定する。

ケースB:クラス内で孤立を感じている

対応:教師が一対一の時間を確保し、子どもの認知(どう見えているか)と感情(何を感じているか)を分けて話を聴く。

結び — 「がんばれ」を超えて

この季節に必要なのは、励ましの強度を上げることではなく、問いの質を上げることです。問いは扉を開ける道具であり、その扉の向こうで子どもが自分の足で歩き出すのを支えるのが、大人の役目です。

執筆: marco-pagot — 学校の“通いやすさ”を増やす心理学的解説。転載・引用する場合は出典を明記してください。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました